二人でまわった八十八坂 - 金沢の魅力を感じる教材としての坂道
石川県立盲学校(金沢市小立野5丁目)の箸本淳也教諭は、教え子の薫くん(中学3年生)とともに約半年かけて金沢市にある88の坂道をめぐった。坂道には基本的に学校から徒歩で向かったという。金沢の旧市街地全域にわたる「坂道マップ」と、坂道一つひとつの感想を書き留めた冊子「金沢散歩 坂めぐり日誌」。その厚みが二人の積み上げた運動量の多さを物語る。
薫くんには視覚障害に加え知的障害がある。カリキュラムは薫くんの状態に合わせてすべてオーダーメイドで作成した。箸本教諭は「世界を少しずつ広げてもらうため」学校外での活動を意識して取り入れている。
坂道を上り下りすることで運動を、と考えていた。最初に学校近くにある鶴間坂に行ったところ「趣や風情を感じ」どうせなら他の坂道も、と足を伸ばしたことが坂めぐりのきっかけになった。点字ブロックや手すりが整備された坂道から、民家の脇にある名無し坂まで、当ブログや、ブログ「金沢九十九坂」を参考に行き先を決めた。地図を片手に薫くんと探索し、二つのブログの内容を読み聞かせたという。
当初目標の88の坂をめぐった記録として模型や地図、レポート、冊子を作った。10月29日(土)に開催する同校文化祭で展示する。掲示するレポートには「特徴的な坂道☆ベスト11」「(視覚障害者に)優しい坂道」「相対する名前の坂道」など、足で集めた情報がふんだんに盛り込まれている。それは、坂道めぐりを通して二人が感じた「金沢の魅力」に他ならない。
「88の坂を効率よくまわるために下見も行っているので、坂道に行った回数は倍以上になるのですよ」そう言って胸を張る教諭。次は「十一屋小学校付近の坂道」がターゲットだそう。二人の坂めぐりは、次なる目標「100」を目指して続いていく。
追記:101本の坂道を紹介する冊子を制作
後日、箸本先生より101本の坂道を紹介する冊子を送っていただきました。薫さんとめぐった坂道を視覚障害者視点からまとめた素晴らしい内容でした。